子どもが巣立ったとき、定年退職を迎えたとき。人によって区切りの時期は様々だが、「第二の人生」を迎える時期がいずれ来る。人生100年時代、まだまだ先が長い日々をどんな気持ちで過ごしていけばいいのだろう。宗教学者の山折哲雄さん(93)に聞いた。
――私事で恐縮ですが、この春、息子に続いて下の娘も社会人になりました。父親としての役割がこれで終わるわけではありませんが、何か一段落したような気持ちもあります。一方でまだ50代。これからの生き方を考えていたとき、山折さんの近著で「林住(りんじゅう)期」という考え方を知りました。
林住期は第3のライフステージ
古代インドでは、紀元前後のころから「四住期」という人生観がありました。人生というのは四つの段階を経て終わるのが理想だという考え方で、バラモン(当時の上流階級)の指針となった「マヌ法典」という書物にも出てきます。4段階は「学生(がくしょう)期」「家住(かじゅう)期」「林住期」「遊行(ゆぎょう)期」の順で、林住期は第3のライフステージということになります。
――学生期、家住期は、文字から何となく想像できます。
学生期は師について学ぶ時期のことです。家住期は結婚して子どもをつくり、職業に専念する時期です。この二つは、現代の私たちとたいして変わりません。面白いのが林住期です。子どもが成長し、仕事が一段落した後に、「林に住む」とあるように、自分一人で外に出る。現実の生活や家庭を離れて旅に出て、自分がそれまでやりたいと思っていたことを自由にやるんです。
――具体的にはどんなことですか。
古代インドの人生観に「第二の人生」を生きるヒントがあると山折さん。記事の後半では、老いることは衰退ではないと語ります。
聖地巡礼であるとか、音楽の…